「アラブの春」から1年。「革命ドミノ」の発端となったチュニジアの首都には、ベール姿の女性が増え、大学構内ではイスラム過激派が示威行動。
あれから1年、一体何が起きているのかを取材しました。
「アラブの春」と呼ばれる民主化運動の発火点となったチュニジア。
23年間の独裁政権を倒したジャスミン革命は、今、新たな変化を見せていた。
地中海に面した北アフリカのチュニジアは、北海道の2倍ほどの面積に、およそ1,000万人が暮らす。
革命以降、首都のチュニスでは、「ヘジャブ」などを売る店が増えているという。
今、店で売れているのは、女性が髪を隠す「ヘジャブ」というイスラム教徒のスカーフや、顔を覆う「ニカーブ」というベール。
店主は「お客の要望があるから売っているんです」と話した。
客は「以前よりも革命後につける人が増えました」と話した。
チュニジアはイスラムの国だが、独立から50年以上にわたり、政治的に政教分離を進め、女性の権利も保障。
街中の女性たちは、欧米と同じようなファッションが目立ち、ナイトクラブでは女性が堂々とアルコールのグラスを傾ける光景も見られる。
社会の隅々まで世俗化が定着している。
それだけに目立つ、イスラム回帰とも取れる動き。
背景には意外な現実があった。
取材班が訪ねたのは、チュニス市内に住むゾハラさん一家。
25歳の息子のアイメヌさんは、エンジニアで公務員。
取材中に勤め先のブランドショップから帰ってきたのは、娘のメリヤムさん(27)。
アイメヌさんは「(革命後の景気は?)駄目だね。いつまでたっても、どうにもなりません。チュニジアがばらばらになりそうなので」と話した。
メリヤムさんは「(革命から)半年で国も経済もぐちゃぐちゃ」と話した。
アイメヌさんは「チュニジアには80万人の失業者がいる。年内に100万人に達するかもしれない」と話した。
実は革命後の政府の下で、国民生活は厳しい状況に追い込まれているという。
街の人は「物価が上がって生活できません。子どもが6~7人もいたら生活できないわ」と話した。
特に食料品などは、革命前に比べ高くなっているという。
さらに、街中で市民同士の口論が起こっていた。
「いつまでここを汚すんだ! いいかげんにしろ」と話す失業者に、「おれたち失業者で、地域の人も手伝ってくれている。あんたも意見があるだろうが、そんな言い方するな」と話す失業者。
独裁政権崩壊後も上向かない生活や待遇の改善を求め、こうしたストライキや座り込みなどが発生している。
そうした中、2011年10月の憲法制定議会選挙では、かつて非合法だったイスラム政党が217議席中89議席を獲得し、第1党に躍進した。
革命後も解決されない貧困や失業などの不満を吸収し、成長しているのがイスラム勢力だとの見方もある。
街中に徐々に増え始めた若い女性たちのスカーフ姿。
若者が集まる大学では、イスラム急進派の学生たちが座り込みを続けているという。
彼らの要求は、校内でのイスラム寺院や礼拝所の設置や、現在、共学の授業を男女に分離すべきというもの。
イスラム急進派学生は「夢は...イスラム国家が再興されること。コーランの実践で統治された国にね」と話した。
独裁政権を倒し、民主化と生活の安定を願った人々。
その実現へのプロセスは今、不透明さを増している。
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